2016年の日本シリーズは、日本ハムが広島を4勝2敗で破り、

10年ぶり3度目の日本一に輝いて幕を閉じた。

その日本シリーズの第6戦で先発のマウンドに上がったのが、

背番号19の若き右腕、野村祐輔だった。

今年の広島カープセリーグ制覇の立役者のひとりであった彼だが、

いつもの調子には程遠く、4回7安打4失点で降板した。

レギュラーシーズンの彼の安定感あるピッチングを見ているだけに、

ここまであっさりとKOされるとは思いもしませんでした。

そんな今や広島カープのエースへと成長した野村祐輔だが、

彼には過去に今回の日本シリーズの敗戦以上の苦い思い出がある。

話は高校時代にまで遡る。

今から9年前の夏に開催された第89回全国高校野球選手権大会。

野村祐輔は、広陵高校のエースとして夏3年連続決勝進出中の駒大苫小牧、

春夏連覇狙う常葉学園菊川という強豪を次々と撃破。

決勝まで駒を進めた広陵高校の相手は、無名のダークホース佐賀北高校。

前評判では野村祐輔を擁する広陵高校の方が高かった。

誰があんな結末を予想できただろうか。

実際、試合が始まると野村祐輔が快投を見せて、

7回まで佐賀北打線をわずか1安打と完璧に抑え込んだ。

7回を終了して4対0で広陵が4点リード。

あぁ、もうこれで広陵高校の優勝だな、誰もがそう信じていた。

しかし、8回裏の佐賀北高校の攻撃で、甲子園の魔物が目を覚ます。

ここまで1安打に抑え込まれていた佐賀北打線が、

2本のヒットとフォアボールで1アウト満塁という絶好機を作り出す。

この時、甲子園全体の観衆は、少しずつ佐賀北の奇跡を信じ始めた。

すると、徐々に形勢は逆転し始め、続くバッターも押し出して3点差。

そんな状況で迎えたのが佐賀北高校のバッター副島浩史。

野村祐輔が投じた3球目、副島が強振した打球は大飛球となり、

レフトスタンドに叩き込む逆転満塁ホームランとなった。

もう奇跡としか言いようがなかった。

「甲子園には魔物が棲んでいる」とはよく言いますが、

まさに甲子園の魔物が目覚めた瞬間を目の当たりにしたようだった。

でも、打たれた野村祐輔には、悔しさというより、

仕方ないといったなんとも言えない爽やかな表情をしていた。

その後、明治大学に進学して大活躍した野村祐輔は、

広島カープにドラフト1位指名され、今ではエースにまで成長した。

あの9年前の夏の甲子園の決勝での苦い経験が、

今の野村祐輔の成長の糧となったのは言うまでもないだろう。